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タバコについていつも健康でいるために

タバコについて

現在の日本の喫煙率は、男性約47.4%、女性約11.5%です。また近年では、若い女性の喫煙率が高くなっています。WHOによる最近の試算で見ると、日本国内でタバコが原因とされる死亡者数は、1995(平成7)年には95,000人(男性76,000人、女性19,000人)です。20年で約2倍に増加し、この傾向はさらに続くことが予想されています。
タバコ関連疾患の多くは、喫煙を開始してから20〜30年かかって発症し、死に至るので、現在の死亡の状況は過去の喫煙の状況を反映しているとお考え下さい。

喫煙率の年次推移(性・年齢階級別)
20〜29歳 30〜39歳 40〜49歳 50〜59歳 60〜69歳 70歳以上 平均
全国 昭和63年 33.8 33.8 30.4 28.8 27.7 18.9 29.6
平成元年 33 33.4 30.6 28.5 25.5 18.6 28.7
2 30.3 32.8 31 26.9 27.6 20.1 28.5
3 28.2 33.1 30.7 25.8 27.3 18 27.8
4 27.1 31 31.2 24.7 25.7 19 27.1
5 25.8 27 27.7 25.7 22.3 17 24.7
6 27.3 29 26.2 23.7 21.5 17.6 24.5
7 34.7 33.6 30.3 27.2 25.3 16.4 28.2
8 29 35.3 29.3 27 23 19.7 27.1
9 37.6 34.7 32.9 29.3 22.3 17.8 28.7
10 36.2 33.1 33.2 26.6 23 23 27.6
11 30.8 31.8 32.1 26.9 22.8 15.9 26.2
12 39 33.9 30.8 28.5 21.1 14.8 27
男性 昭和63年 63.2 63.6 58.1 55.4 52.8 34.4 56.1
平成元年 62.3 65.4 59.5 53.3 50.4 34.5 55.3
2 52.9 63.3 56.6 50.1 51.8 38.8 53.1
3 48.3 57.2 55.6 47 52.4 36.6 50.6
4 47.8 56.9 55.6 47.2 48.1 38.4 50.1
5 44.4 48.7 47.3 47.4 41.8 34.4 44.8
6 45.1 51.2 46.4 41.9 41.9 34.3 43.8
7 60.9 60.8 58.4 54.2 47 31.1 52.7
8 53.6 61.6 56.9 53.1 43.8 38.4 51.2
9 62.5 62.3 60.5 56.6 42.2 35.3 52.7
10 60.3 61.9 60.5 52.5 41.8 32.4 50.8
11 56.3 58.1 57.7 52.9 42.1 33.8 49.2
12 60.8 56.6 55.1 54.1 37 29.4 47.4
女性 昭和63年 10.6 11.5 9.3 7.4 9.2 7.9 9.4
平成元年 8.9 11.7 10.6 9.1 6.8 8.2 9.4
2 11.9 11 11.3 8 8.5 7.2 9.7
3 11.2 13.5 11.8 8 7 5.1 9.7
4 9.7 11.8 11.1 6.6 6.9 7 9
5 10.7 10.2 11.7 7.9 6.1 5.6 8.9
6 12.7 11 9.9 8.6 5.6 6.3 9.1
7 16.9 13.2 11.1 9.1 7.6 6.3 10.6
8 12.8 15.3 9.9 8.9 7.2 6 9.8
9 21.3 15.6 13.7 10 5.8 5.7 11.6
10 19.1 13.8 12.7 9.6 7.9 5.4 10.9
11 16 14.9 14.2 8.3 7.9 3.5 10.3
12 20.9 18.8 13.6 10.4 6.6 4 11.5
出典:国民栄養の現状(平成12年国民栄養調査結果より)

タバコの煙の成分

タバコに火をつけてから発生する煙には、ニコチン、一酸化炭素、種々の発ガン物質や発ガン促進物質、種々の線毛障害性物質、そのほか多種類の有害物質が含まれています。
煙に含まれている種々の物質のうち、生理的に影響を及ぼす主な有害物質はニコチンとタールです。ニコチンの薬理作用により中枢神経系の興奮と抑制が生じ、心拍数の増加、血圧上昇、抹消血管の収縮などの影響をもたらします。体内に吸収されたニコチンは代謝されてコチニンを生じるほか、最強の発ガン物質を生成します。タバコの依存性は、ニコチンの精神及び身体依存によるものです。
いっぽうタールとは、タバコの煙の粒子相の総称で、ニコチンや種々の発ガン物質、発ガン促進物質、そのほかの有害物質が含まれます。また、タバコの煙にはこのふたつのほかに4000種類以上の化学物質が含まれており、そのなかには40種類以上の発ガン物質、発ガン促進物質が含まれています。

低タールタバコ

喫煙本数が同じならタール含量の多いタバコより、肺ガンや虚血性心疾患などの危険性は下がりますが、非喫煙者よりは依然危険性は高率です。しかし、低タールタバコはニコチン含量も低いため、喫煙者は本数を増やしたり、吸い方を工夫してニコチン摂取量を調節する傾向があるので、低タール表示は危険性の低減と必ずしも結びつきません。低タール有孔フィルターでは、主流煙中の有害物質は希釈されて減りますが、副流煙中ではかえって増加します。とくに心筋梗塞に対して、低タールタバコは一酸化炭素摂取量が増えるため害が少ないとはいえません。

主流煙と副流煙

タバコの煙は、喫煙時にタバコやフィルターを通過して口腔内に達する主流煙と、口腔内から吐き出された呼出煙、および点火部から立ち昇る副流煙に分けられます。いずれもエアロゾル(液滴)の形状をなす「粒子相」と、気体からなる「気相」に分けられます。各種有害物質の発生は主流煙より副流煙の方が多く、主流煙は酸性ですが、副流煙はアルカリ性で、目や鼻の粘膜を刺激します。

煙による急性症状

常習喫煙者ではニコチンの薬理作用により、精神神経機能の「促進」と「抑制」という2パターンの急性効果をもたらし、知的作業能率についても上昇と低下の相反する成績が報告されています。喫煙による急性影響は次のような症状を表します。
【呼吸器系】 咳・痰などの呼吸器症状、呼吸機能障害(息切れなど)
【循環器系】 血圧上昇、心拍数増加、末梢血管収縮・循環障害(手足・足先のしびれ感、冷感、肩こり、首のこり、まぶたの腫れなどの症状)
【消化器系】 食欲低下、口臭、その他の消化器症状
【中枢神経・感覚器系】 知的活動能低下、睡眠(就眠)障害
【身症状】 健康水準の低下、体重減少

副流煙が及ぼす急性影響

タバコの煙(副流煙)は、各種成分の濃度が高く、アルカリ性のためニコチンが強く作用することによります。副流煙の及ぼす急性影響は、次のような症状を表します。
【眼症状】 かゆみ、痛み、涙、瞬目
【鼻症状】 くしゃみ、鼻閉、かゆみ、鼻汁
そのほか、頭痛、咳、喘鳴、呼吸抑制、指先の血管収縮、心拍増加、皮膚温低下などの症状があります。この急性影響は、常習喫煙者より非喫煙者の方が反応が強いことも確認されています。これらの症状に加え、タバコ特有のにおいにより、他人のタバコの煙に対する不快感、迷惑感の原因となります。

喫煙が及ぼすリスク・・・。ガン

喫煙は単独で、ガンの原因の約30%を占めます。また、喫煙は多くのガンと深い関係があり、タバコを吸う人は吸わない人に比べ、肺ガンで死亡する危険性が約4.5倍、咽頭ガンでは32.5倍と高くなります。喫煙により呼吸器系(肺ガン、喉頭ガン、口腔・咽頭ガン)、消化器系(食道ガン、胃ガン、肝臓ガン、膵臓ガン)、泌尿器系(腎盂ガン、尿管ガン、膀胱ガン)、子宮頸部のガンなど、全身の多くに、ガンにかかる危険性が高まります。肺ガン、食道ガン、肝臓ガン、膵臓ガンなどは極めて治りにくい難治性のガンですが、最近、罹患・死亡とも増加しています。1人の人がこれらの喫煙と関連したガンの複数にかかる「多重ガン」も増えています。

(参考:財団法人健康体力づくり事業財団「喫煙と健康―喫煙と健康問題に関する報告書」より)

喫煙が原因となるそのほかの病気

喫煙が健康に及ぼす影響はガンだけではありません。胃・十二指腸潰瘍、口腔粘膜の角化およぴ色素沈着、慢性萎縮性胃炎、肝硬変、クローン病などの危険が増大します。また、タバコを吸うと歯肉へのメラニン色素の沈着や、歯へのタールの沈着を起こしやすく、歯槽膿漏や歯周囲炎などの歯周病にかかりやすくなります。このほか、脳萎縮、白内障、難聴、味覚・嗅覚の低下、体液性免疫の低下、老化の促進なども見られます。
タバコを吸う女性は、吸わない人と比べて1〜2年閉経が早く、加齢と伴う骨量の減少も大きいという報告があります。閉経が早いと、骨粗しょう症に対して予防的な役割を果たすとされている女性ホルモン(エストロゲン)が低下し、骨量の減少を早め、骨粗しょう症の発症につながるとも考えられています。タバコを吸うと血管が収縮して血行が悪くなり、またメラニン色素の代謝に関係のあるビタミンCを体内で消費させたり、肌荒れ、シミ、シワ、そばかすになりやすくなったりします。

禁煙指導

喫煙者の多くは禁煙を希望していますが、「ニコチン(薬理的)依存性」と、タバコを吸うことが習慣になって「心理的・行動的に依存」するために、なかなか禁煙に成功していません。つまり、決して自分の意志が弱いからではないのです。
効果的な禁煙方法とは、禁煙の動機づけをして実行に踏み切らせ、禁煙を維持するものですが、単一の方法ですべて有効なものはなく、いくつかの方法と要因の組合わせが禁煙の成功をもたらすと考えられています。禁煙指導には個人的な方法と集団的な方法があります。
個人的な方法としては、医療機関で医師が患者に禁煙指導する方法が重視されています。「スモークバスターズ」などそのための教材も開発されており、最近ではニコチン代替療法(ニコチンガム商品名:二コレット)が1994年に輸入承認され、現在では薬局で購入できるようになりました。禁煙補助剤を上手に使うと禁煙しやすいともいわれています。集団的な方法としては、「禁煙道場」や「喫煙講習会」のような行動科学的な方法に基づくプログラムがあり、保健所などの公衆衛生の現場で類似した方法で禁煙指導を行うことも試みられています。

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