ポストアガリクス的な形で、近年急激に脚光を浴びているのが、メシマコブです。名前から、海藻だと思っている方もいるようですが、立派なキノコです。
桑の古木に寄生する多年生のキノコで、サルノコシカケに非常によく似ていて、ぱっと見た外見だけでは見分けがつきません。しかし、傘の内側を見ると、ひだに黄色や茶色の独特の剛毛が生えていますから、ここでわかります。これが、メシマコブの外見的な特徴です。
メシマコブという名前の由来ですが、長崎県の男女群島にある女島でたくさん採れたことから名づけられたといわれています。
このメシマコブが最近になって急に脚光を浴びてきたといいましたが、研究そのものは30年以上も前から行われています。
1968年の国立がんセンター研究所化学療法部と東京大学薬学部の実験では、なぜいままでメシマコブが注目されなかったのか、不思議とも思える驚きの結果が出ています。
この実験では、ザルコーマ180というがん細胞を皮下に移植したマウスが使われました。
このマウスに、メシマコブやマツタケ、シイタケ、エノキダケなど各種のキノコのエキス(熱水抽出したもの)を注射し、がんの増殖をどれくらい抑えることができるかを比較しました。
結果は、メシマコブがもっとも高い成績を上げました。なんと、96・7パーセントという驚異的な腫瘍抑制率(グラフ参照)でした。
しかし、この結果が医療現場に反映されなかったのは、メシマコブがなかなか入手できないキノコだったからです。ごく限られたところでしか生育しないため、自然に育ったものを大量に使うのは困難でした。だからといって、人工栽培をしようとしても、菌糸の生育が遅いため、簡単にはできません。
すごいことはわかっていても、手に入らないのではどうしようもありません。“幻のキノコ”をいつまでも相手にしているわけもいきませんので、研究者たちの興味はメシマコブから離れ、他のキノコヘと移っていったのだろうと思います。 |