キチン・キトサンは、カニの甲羅やエビの殻に存在する多糖類の一種。ヒトの消化酵素で消化されないという意味では、キチン・キトサンは動物性の食物繊維である。
甲殻類の殼からタンパク質やカルシウムなどの成分を除いたものがキチン。キチンをアルカリ溶液で処理するとアセチル基が除かれ、キトサンになる。
キトサンの効能はLDLコレステロールの低下作用。動脈硬化の予防および抑制作用。慢性腎不全に伴う貧血や電解質異常の改善作用。肥満や高血圧、高脂血症、糖尿病といった生活習慣病の改善効果。
キトサンは、経口摂取のあと、消化管内で胆汁酸や窒素代謝物、リン脂質、コレステロール、脂溶性ビタミン、カルシウムなどと結合し、効果を発揮すると考えられる。脂肪の排泄増加という作用は明らかではない。
動物実験では、キトサンの抗肥満作用が示されている。愛媛大学の研究では、高脂肪・高コレステロール食によって高脂血症および肥満を生じたマウスに対して、キトサンを投与すると、体重増加の抑制、高脂血症や糖尿病の改善を認めたという。また、名城大学の研究では、キトサンを投与したマウスにおいて、糖尿病の進行を抑制する効果が認められた。
これまでにいくつかの臨床試験によって、キトサンの効果が示されてきた。たとえば、2000年に報告された臨床試験では、33名の2型糖尿病患者に対して、450mgのキトサンを1日3回投与した結果、総コレステロール値とLDLコレステロール値が低下したという。
これまでに5つの臨床試験において、キトサンとカロリー制限による食事療法との併用による抗肥満効果が認められた。
キトサンの抗肥満作用を検証した研究では、14のランダム化比較試験における合計1131名の被験者(キトサン群594名、偽薬群537名)が、対象として解析された。その結果、偽薬群に比べて、キトサン投与群での有意な体重減少作用、総コレステロール値の有意な低下、中性脂肪値の有意な低下、収縮期および拡張期血圧の有意な低下が認められた。
ただし、便中の脂肪排泄量に関しては両群間での有意差は示されなかった。また、有害事象の発生頻度には両群間での差は認められなかった。この結果から、キトサンによる抗肥満作用が示唆される。 |